ひとりごつ

出典: フリー多機能辞典『ウィクショナリー日本語版(Wiktionary)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

古典日本語[編集]

動詞[編集]

ひとりごつ【りごつ】

  1. 独り言を言う。もっぱら連用形で用いられる。
    • 入り方の月影すごく見ゆるに「ただ是れ西に行くなり」とひとりごちたまひて「いづ方の雲路に我も迷ひなむ月の見るらむことも恥づかし」とひとりごちたまひて例のまどろまれぬ曉の空に千鳥いとあはれに鳴く(紫式部源氏物語須磨』)
      • もう落ちるのに近い月がすごいほど白いのを見て、「唯是西行不左遷(ただこれにしへゆくさせんにあらず)」と源氏は<菅原道真の詩の一節を独り言のように>歌った。「いづ方の雲路に我も迷ひなむ月の見るらむことも恥づかし<どの方向の雲にわたしも迷ってしまっているのだろう、月さえ見て嘲笑しているようで恥ずかしいことだ>」とも<独り言で>言った。例のように源氏は終夜眠れなかった。明け方に千鳥が身にしむ声で鳴いた。(与謝野晶子訳 <>内斜体はwiktにおける補足)
      • 入り方の月の光が、寒々と見えるので、「月はただ西へ行くのである」と独り口ずさみなさって、「どの方角の雲路にわたしも迷って行くことであろう 月が見ているだろうことも恥ずかしい」と独詠なさると、いつものようにうとうととなされぬ明け方の空に、千鳥がとても悲しい声で鳴いている。(渋谷栄一訳)