わけ

出典: フリー多機能辞典『ウィクショナリー日本語版(Wiktionary)』
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わげ も参照。

日本語[編集]

名詞:訳[編集]

わけ

  1. 物事道理筋道
  2. 言葉などの意味内容
  3. 物事の理由事情
    1. 一般に物事の理由事情。また、どうしてそうなったかの経緯
    2. 特筆すべき、もしくはにすることが憚られるような理由や事情。
      • 私たちは、わけあって離婚することになりました。
      • このスーパーで売っているあり商品は驚くほど品質よい
  4. (しばしば「わけがない」「わけのない」など直後に否定を伴って) 困難手間てま障害
  5. (古用法) 男女情事。またその顛末
  6. (古用法) 遊里でのしきたり[ja 1]
  7. (主に「用言連体形+わけだ」「体言+の/なわけだ」または「用言終止形+というわけだ」「体言+というわけだ」のかたちで、助動詞的に用いる)
    1. 摘示したことがらについて、同一の内容を言葉を変えて表現することで説明を補強したり全体をまとめたりする。また、内容を確認したり相手の確認を是認したりする。話者独自の視点や見解が入り込むこともある。
      • 代入すると2の3乗かける5となります。つまり40というわけです。
      • 道路が整備され宅地開発が進み小売店も増えた。町は発展しているわけだ。
      • 「連勝複式は4-6か」「ほら、おれが買った馬券。4-6」「え、当たったわけ?」「そういうわけ
      • 「明日は午前便に乗るから」「お昼前に着くわけね。わかった」
      • 三人の父親から相当金額が、当り屋(=三人が食い逃げをしたうどん屋の名前)に支払われた。つまり示談金というわけだね。そのおかげで、三人の生徒処分を免かれた。(梅崎春生狂い凧』)
      • 「そこもとは、たしか」/「伊東七十郎だ、まさか、知らなかったんじゃないだろうな」/「たしか小野どのの」/「さよう、桃生郡小野の館主、伊東新左衛門の義理の弟だ、正確にいえば新左衛門の妻がおれの姉というわけさ、わかったかね」(山本周五郎樅ノ木は残った 第三部』)
      • 「(略)他人希望順応したり、掣肘されて生きるようなことは、私にはできない」/「つまり好き勝手なことがしたい、というわけか」/「つめて云えば、そうだ」(山本周五郎樅ノ木は残った 第三部』)
    2. 摘示した事実を根拠として、こうなるはずだという強い推測を表す。また、必然的に導かれることを示す。
    3. 物事が明らかになった時、それを当然帰結すべきものであったと考え納得するさまを表す。
      1. 「わけだ」を含む述部に力点がある表現。
        • 宇宙いくに従い、重力がなくなる。(略)それでは困るから、わざわざ器械をまわして、この艇内だけに特に重力を起してあるのである。その重力装置が、故障になったという知らせである。道理で、ゴム風船が、天井へ上ったきり、落ちてこないわけだ。 (海野十三大宇宙遠征隊』)
        • ところが木戸は立った(=席を立った)まま一時間すぎても戻らなかった。戻らないわけだ。木戸は用便をすましたあと、ふと庭ゲタをつッかけて宿をでてしまったのである。 (坂口安吾桂馬の幻想』)
      2. 「だから」「それで」などに力点がある表現。
        • 雨が降ったんだね。だから路面が濡れているわけだ。
        • 今日は駅伝大会の日か。それで交通規制してたわけだね。
    4. 仮定したことがらをもとにすれば、こうなるはずだという強い推測を表す。
    5. 事実を摘示して話し相手を説得させ、話を展開させようとする意志を表す。
      1. 既知の事実を話の前置きとすることを表す。
    6. (口語, 疑問を呈する文の文末などで, 「わけ」で文が終止する場合は上昇調のイントネーションを伴う場合がある) 相手の態度や相手が思案していることを、問いただすさまを表す。
  8. (しばしば婉曲表現, 主に「わけではない」「というわけではない」などの否定的な文中で)
    1. 事実を摘示して説得しようとする意志を表す。
    2. 前言の一部に含まれる誤解されうる箇所を受け、付加的に否定することを表す。また、聞き手が抱く予想や推論に対する否定を表す。
    3. 述語以外の文要素を否定することを表す。
      • 今日行くわけではないからあわてることはないよ。(「今日」を否定している。別の日に行く意)
      • それは私が言ったわけではありません。(「私が」を否定)
      • 退屈だから来たわけじゃないよ。用事があるから来たんだよ。(「退屈だから」を否定)
      • そこだけが故障しているわけではない。(「そこだけが」を否定。ほかにも故障がある意)
      • また現代の作家が斯くの如き感激に乏しい生活に人生の深い意義を見出そうとして、ものを書いているわけでもない。 (小川未明囚われたる現文壇』)
      1. 述語以外の文要素のうち、全称的な内容のものを否定することで部分否定を表す。
    4. (二重否定の形で) その事実を部分的に肯定することを表す。
  9. (主に「わけがない」などの否定的な文中で, 口語では「わけない」) 強く否定する意味を表す。
  10. (「わけにはいかない」「わけにいかない」などの形で) できない。行うことが許されない。通らない。
    1. (「しないわけにいかない」などの形で) せざるをえない。することを余儀なくされる。

語源[編集]

  • 分け」より。
  • 漢字表記に関しては、形が類似している「」からの流用。

発音[編集]

用法[編集]

  • 語義1〜4はやくと紛れることから、仮名書きされる場合もある。また、語義7〜10は形式名詞的に用いられるため、仮名書きされる場合が多い。
  • 語義3については「理由」という漢字を当てて表記する場合もある。
    • その理由わけを教えてくれ。
  • 昭和初期まで、特に語義7〜10の意味では、「訳」と区別するために「訣」の字が用いられた。
  • 語義7-6の用法では、相手に対する否定や批判の意を包含する場合が多い。多くの場合「」よりも意味が強い。
    • どこを見て歩いているの。 (単純に疑問を呈する表現)
    • どこを見て歩いているわけ。 (「本来見るべきところ (=前) を見て歩け」といった批判の意をしばしば含意する)
    • どこを見て歩いているわけなの。 (「な」 (助動詞」の連体形) + 「の」 (助詞) を用いて表現を和らげることも可能)
  • 語義8は婉曲的な意味合いをしばしば持つが、「決して」といった語とともに用いて強調することが可能。無論、「わけ」を用いないほうが直球で明快な表現となる。
    • 俺は決してお前を騙したわけではない。

類義語[編集]

対義語[編集]

熟語[編集]

関連語[編集]

連語[編集]

成句[編集]

翻訳[編集]

語義1:物事の道理や筋道 — 「道理#翻訳」を参照のこと
語義2:言葉などの意味 — 「意味#翻訳」を参照のこと
語義3:物事の理由 — 「理由#翻訳」を参照のこと
語義3-1:どうしてそうなったかの経緯 — 「経緯#翻訳」を参照のこと
語義5:男女の情事 — 「情事#翻訳」を参照のこと
語義7-2:こうなるはずだという強い推測を表す — 「はず#翻訳」を参照のこと
語義7-3-1:物事が明らかになった時、それを当然帰結すべきものであったと考え納得するさまを表す — 「はず#翻訳」を参照のこと
語義7-4:仮定したことがらをもとにすれば、こうなるはずだという強い推測を表す — 「はず#翻訳」を参照のこと

名詞:分け・別け[編集]

わけ

  1. 二つ以上に分けること。区分。また、分けたもの。
  2. (動詞連用形について)違いを判別すること。区別すること。
  3. 引き分け勝負がつかないこと。
  4. 分配配分
  5. 残り物残飯
  6. 諸費支払い
  7. 村落の中の区分区分け
  8. (日本音楽, 略語) 歌い分け三味線音楽などの歌唱部分を分担して独唱すること、またその部分[ja 2]
  9. (古用法) 芸娼妓が得た花代主人折半すること。
    1. (転じて) 花代一の半分、銀五

発音[編集]

用法[編集]

類義語[編集]

対義語[編集]

関連語[編集]

熟語[編集]

翻訳[編集]

語義1:二つ以上に分けること — 「区分#翻訳」を参照のこと
語義3:引き分け — 「ひきわけ#翻訳」を参照のこと
語義4:分配 — 「分配#翻訳」を参照のこと
語義5:残り物 — 「のこりもの#翻訳」を参照のこと
語義6:支払い — 「しはらい#翻訳」を参照のこと

固有名詞:別[編集]

わけ

  1. 古代の一。五世紀頃の皇族に対する尊称を由来とし、古代の豪族らが名乗ったとされる。

発音[編集]

固有名詞:和気[編集]

わけ

  1. 岡山県東部に位置する。また同町の大字
  2. 古代の一。垂仁天皇皇子である鐸石別命ぬてしわけのみこと末裔とされる。

発音[編集]

由来[編集]

  • 古代に存在した吉野川渡し船別之渡わけのわたし」より。

参照[編集]

動詞:分け・別け[編集]

わけけ・け】

  1. わける」 (カ行下一段活用) の未然形連用形

発音[編集]

参照[編集]

動詞:湧け・沸け・涌け[編集]

わけけ・け・け】

  1. わく」 (カ行五段活用) の仮定形命令形

発音[編集]

接頭辞 [編集]

わけけ】

  1. (固有名詞の前に置いて) 暖簾分けされ独立した。

発音[編集]

参照[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. 1.0 1.1 用例掲載の都合上、文末に句点を付して調整した。
  2. 2.0 2.1 この文章は「クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンス」(http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/ )によって公開されている。
  3. 3.0 3.1 用例掲載の都合上、現代仮名遣いに改め、文末に句点を付して調整した。
  4. 「耳順」は六十歳、「知天命」は五十歳を指す。いずれも孔子論語』為政を由来とする。

出典[編集]

  1. 『デジタル大辞泉』 小学館. 2016年4月の更新版. わけ【訳】
  2. 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目電子辞書版』 ブリタニカ・ジャパン. 【分け】

古典日本語[編集]

名詞[編集]

わけ (近世語)

  1. 【別け・分け】
    1. 分けること。区分
    2. 分け前配分分配
    3. 神仏への供え物お下がり。また、残飯
    4. 諸費支払い
      • こまごまわけ書き続けを、くれ読むうちに
        こまごまと諸費用を書き続けたのを、涙にくれて読むうちに[ojp 1]
      • 三人ござってわけ立てて去なしやった (『新色五巻書』)
    5. 芸娼妓が得た花代主人折半すること。
  2. 【訳】
    1. 物事の道理や筋道。
    2. 物事の理由事情。また、どうしてそうなったかの経緯
    3. 遊里でのしきたり。また、それに精通する者。
    4. 男女情事

類義語[編集]

  • (語義2-1) 道理だうり
  • (語義2-2)

熟語[編集]

連語[編集]

成句[編集]

代名詞[編集]

わけ

  1. わたくしわたし。自らを卑下する際に用いられる自称の人称代名詞
    • 我が君はわけをば死ね思へかも逢ふ夜逢はぬ夜二走るらむ (『万葉集』巻第五、国歌大観五五二番)
      あなたさまは私めを死ねと思っているからか、会ってくれる夜と会ってくれない夜が交互に過ぎ去ってゆくのだろう[ojp 2]
  2. あなた親しい人、特に目下の人を呼ぶ際に用いられる対称の人称代名詞。
    • わけがためあがもすまに春の野に抜ける茅花食し肥えませ (『万葉集』巻第八、国歌大観一四六〇番)
      おまえさんのためにわが手も休めずに春の野で抜いたつばなであるよ。召し上がってお太りなさい[ojp 2]

語源[編集]

  • もと「若い衆」の意味。

固有名詞[編集]

わけ

  1. 古代の一。五世紀頃の皇族に対する尊称を由来とし、古代の豪族らが名乗ったとされる。

動詞:鎔け[編集]

わけけ】

  1. わく」 (カ行四段活用) の已然形命令形

動詞:別け・分け[編集]

わけけ・け】

  1. わく」 (カ行四段活用) の已然形命令形
  2. 「わく」 (カ行下二段活用) の未然形連用形

参照[編集]

脚注[編集]

  1. 1.0 1.1 1.2 宮腰賢、石井正己、小田勝『旺文社全訳古語辞典 (第四版)』 旺文社. わけ
  2. 2.0 2.1 宮腰賢、石井正己、小田勝『旺文社全訳古語辞典 (第四版)』 旺文社. わけ【戯奴】