トーク:thereof

出典: フリー多機能辞典『ウィクショナリー日本語版(Wiktionary)』
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the evil thereofにおけるthereofの語釈はご指摘に従います。しかし他は誤りがあるように思います。
まずofはもともと対格支配や奪格支配ではなく与格(または属格)支配のようです([1][2]、および[3]のp35を参照)。
またかりに何らかの前置詞が対格支配だったとしても、それは前置詞の目的語に対格形を要求するというだけのことであって、前置詞が対格の機能を有するということにはなりません。古英語には対格支配する前置詞がいくつかありますが、それらの多くは移動の方向といった動きを伴う意味です(ドイツ語の前置詞の4格支配と同様)。
さらに私の調べてみた範囲では、語義として「それを」と記してある辞書はいまのところ見当たりません。はじめの語義として記してあるのは「それの」「それについて」です。研究社の新英和大辞典は残念ながらまだ見ることができていませんが、そちらには記述があるのでしょうか。--Ryota7906 (トーク) 2017年12月8日 (金) 04:51 (UTC)[返信]

まず用語の誤用からお詫びを。ご指摘通り、もともと「対格用法」「奪格用法」と書きたかったのですが、ちょっと筆が滑って「支配」と書いてしまいました。「支配」はその前置詞の後にどの格を用いるかということ(言語によってはこの組み合わせが変わると意味が変わることがある)なので、最初の書き込みは誤用です(なお、リンク先にもあるようにofは対格(dat.)支配です)。
つぎに、"of 〇〇"は常に属格(現代英語では所有格)用法かというと、副詞句になる場合はもちろんそうではありませんし、名詞に対して修飾的に用いられる場合でも必ずしもそうではありません。例えば"love of nature"という句は、自然を主体として「自然が愛すること」ではなく、「自然を愛すること」と訳されるのが一般的です。で、英和大辞典はどう記述しているかというと、明確に「それ」としています。そしてそのあとに、例文"Do not eat thereof."を添えています(著作権を斟酌して本文には入れたくなかったのですが、引用の範囲という事で記載します)。なお、英語の大辞典を見るとOED, Randomhouse, Collinsは意義を1. of that系, 2. from that系の2通りに分けていました(米系Websterは、1をさらに、of~とconcerning~に分ける)。これは想像するに、英語学がラテン語文法学の強い影響の下に成立しているので、ラテン語の格とその用法に引きずられた説明がなされたという事情じゃないかと思います。事実、新たな考え方で編集されているLongmanはこのような分け方をせず、"relating~"にまとめられています。ただ、ついでながら、今回調べた結果では、間接目的語(=与格)的に用いているものもあり、どこまで意識されているのかはよくわかりません。あと、名詞修飾に見えるものが多いので「それの」をしたいのは分からなくはないのですが、この語は、あくまでも副詞なので限定用法的な訳になる「~の」は避けた方が無難だと思います。--Mtodo (トーク) 2017年12月9日 (土) 13:57 (UTC)[返信]
dat.(=dative)は与格です。しかしそれは単純ミスということでまあいいのですが。
"love of nature"についてですが、意味論的解釈をとるならば、loveのうちの動詞的意味内容に対しnatureがその目的語的な位置づけにあるということは理解できます。しかし、統辞的にはof nature句が名詞loveを限定的に修飾していることもまた明白です。
"Do not eat thereof."については、動詞句eat of sth「<もの>を食べる」の反映と考えられます。別の事例として本項目にお挙げいただいている"inform him thereof"についても同様で、基底にはinform sb of sth「<人>に<ものごと>を伝える」という動詞句構造があります。つまりthereof単独の特殊な事情ではなく、特定の動詞と組み合わされたときにofが担う機能をthereofがそのまま受けついでいるということです。
であるならば、ofにはより代表的な機能として属格的・所有格的・限定詞的・名詞修飾的な意味があるのですから、thereofに同じ意味があると考えるのも全く自然なことですし、実際にthereofを限定詞的に解釈すべき用例も多数あると思います。
たとえば本項目に例として挙がっている"in lieu thereof"ですが、lieuは本来「場所」という意味であり意味論的に分析しても動詞性を帯びた意味内容を持っているわけではないので、この句の中のthereofを「それを」と解釈するのは無理があります。ここでは「それの」でなければならないところです。
Treaty on the Prohibition of the Emplacement of Nuclear Weapons and Other Weapons of Mass Destruction on the Sea-Bed and the Ocean Floor and in the Subsoil thereof(w:核兵器および他の大量破壊兵器の海底における設置の禁止に関する条約)や、
Please refer to the Regulations and in particular Articles 99 and 100 thereof.[4]なども同様でしょう。
また、副詞であっても語によっては限定的用法もありますし、そもそも品詞は学者が便宜的に当てはめるもので、特に副詞類はそのふるまいが典型的なものから外れる例が少なくありません。副詞に分類されていることにあまり引きずられるべきではないのではないかと思います。
以上のことから、thereofの語釈として「それの」の項を削除してしまうのは依然誤りであると考えます。--Ryota7906 (トーク) 2017年12月10日 (日) 10:53 (UTC)[返信]
ところでWilliam Morris ”The Story of the Glittering Plain”がGutenbergにあったので検索してみたのですが、If his friends should ever hear of her,〜の一節が出てきません。Google ブックスのIsaac Mitchell ”Alonzo and Melissa, Or the Unfeeling Father”にこの文が見つかったので出典はおそらくこちらの誤りではないでしょうか。--Ryota7906 (トーク) 2017年12月10日 (日) 11:17 (UTC)[返信]
確かに。出典の複写ミスです。訂正しておきます。--Mtodo (トーク) 2017年12月12日 (火) 00:52 (UTC)[返信]
こちらこそ調査不足でした。Isaac Mitchell "The Asylum"の海賊版として、Daniel Jackson, Jr. "Alonzo and Melissa"が流布したという事情だそうで、先のコメント中では著者名と作品名を混在させてしまっていました。いま入手容易な版は後者の海賊版の方らしく、前者の版は私も内容の確認が取れないので、出典はDaniel Jackson, Jr. "Alonzo and Melissa"ということでいいかと思います。--Ryota7906 (トーク) 2017年12月12日 (火) 10:21 (UTC)[返信]
少し調べてみた範囲では、「それの」を語義としていない辞典は研究社の新英和大辞典のみ、「それを」を語義に取り入れている辞典は新英和大辞典のほか岩波英和大辞典(「それの[を]」の形で)がありましたが、他の英和辞典はどれもだいたい「それの、それについて」というのが第一語義でした。一つの辞典のみに依拠し他の多数の辞典を無視する格好になるという点からも、やはりバランスを欠いた編集ɛ̃ということになるのではないかと思います。--Ryota7906 (トーク) 2017年12月15日 (金) 12:48 (UTC)[返信]
項目を修正してみます。--Ryota7906 (トーク) 2017年12月23日 (土) 09:58 (UTC)[返信]
そこにかかれていない固有名詞を訳に置くことは感心しません。
おそらく、日本の英和辞典の権威である研究社大英和における邦訳を無視するのは、恐ろしくてできません。以上です。--Mtodo (トーク) 2017年12月23日 (土) 10:08 (UTC)[返信]
訳は少し直しました。
新英和大辞典の記述だけが他と違っているのなら、新英和大辞典編集者のよく言って野心的編集、悪く言えば蛮勇の結果だと思うのですがね。まあともかく包摂的になるようにはしておきました。--Ryota7906 (トーク) 2017年12月23日 (土) 10:23 (UTC)[返信]
thereofと関連の深いhereof、whereofを新英和大辞典で調べたところ、語義はそれぞれ「これの」「何の」で始まっており、hereofの用例の訳として「これを」が一つあった以外に「〜を」は記載されていませんでした。同じ辞書なのにthereofの語義に「それの」がないのは、野心的編集というよりもむしろうっかりミスに近いものかもしれないという気もします。--Ryota7906 (トーク) 2018年1月3日 (水) 15:02 (UTC)[返信]