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出典: フリー多機能辞典『ウィクショナリー日本語版(Wiktionary)』

  、および も参照。

漢字

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字源

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  • 構形本義不明。古来漢字学者は様々な説を唱えたが決定打がない漢字。
    • ものがつかえて進まないさま(許慎説文解字』「象春艸木冤曲而出,陰气尚彊,其出乙乙也。」『說文解字』卷十四 | 乙部・乙
    • 動物を捕らえる縄のわなの形(現代中国の漢字学者・唐漢の『図説字源』の説)。
    • 魚の腸の形(爾雅釈魚、郭沫若はこの『爾雅』を典拠として魚の腸の象形文字だとした)
    • へらとして用いた象る白川静)などの説があるが、どれも証拠がない。十干に用いられるうち、原義が忘れられた。(『甲骨文字趣釈』)
金文 甲骨文字 金文 簡帛文字 小篆 流伝の古文字
西周 戦国時代 説文
(漢)
《六書通》
(明)

意義

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  1. きのと。十干の2番目。
  2. (語義1より)つぎの、二番手の。(例)乙種
  3. 木々植物地面突き破っているさま。
  4. 。(爾雅釈魚)
  5. 工尺譜の音階の一つ。西洋音楽のの音にあたる。
  6. の両脇から尾端にかけての。官吏が威厳を示すために宋代に着用し、無官の民衆が着用すればひどく憎まれたという。(『康煕字典』に引く宋の銭易の随筆『茅亭客話』に「虎有威如乙字,長三寸許,在脅兩旁皮下,取得佩之,臨官而能威衆。無官佩之,無憎疾者。」とある。)
  7. 」の同字(『漢語大字典』掲載)。
  8. 𠄌」の同字(『滑稽列伝注』掲載)。

日本語

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常用漢字

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名詞

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(きのと)

  1. きのと十干の2番目。

形容動詞

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(おつ)

  1. かわりばえがし、があるさま。通常と変わっていて奇妙なさま。奇妙でよい時も、奇妙で良くないときも用いる。

上田万年他『大字典』は「御通」(おつう)の当て字だとしている。江戸時代の通人の呼び名として江戸時代の洒落本などで発祥したか。上田の別の字書『大日本国語辞典』[1]では、『東海道中膝栗毛』五下の「おつな手つきをして、おめへ何をする」と引いている。

    • 次は、肉を刻み油でいため、蕃茄羹トマトじるをかけたものだ。これも、である。(佐藤垢石『たぬき汁』)〔1941年〕[2]
    • 「オッ。なことを云うじゃないか。源次にしては上出来だ」(坂口安吾『町内の二天才』)〔1953年〕[3]

活用

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感動詞

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(おつ)

  1. (インターネットスラング, 略語) おつかれさまの略。「お疲れ」の誤変換由来か、以前からあった若者言葉「おつ」の当て字。

マイナビニュースの説(「「乙(おつ)」の意味とは? 語源や使い方を解説【ネットスラング大辞典】」で)は、若者言葉として「お疲れ様」を「おつ」ということはインターネット普及以前からあったとしており、インターネット普及を1996年とすれば、それ以前からあった用法とする。「乙」の字が当てられたのは「2ちゃんねる」ではないかとしており、それだとすれば2ちゃんねる開設(1999年)以降に「乙」という漢字が当てられたこととなる。

国語学者の内山弘は「お疲れの誤変換由来」とする。(『ネットの日本語 -2ちゃんねるとニコニコ動画を中心に-』地域政策科学研究 7 219-236, 2010-03-10 鹿児島大学紀要 2ちゃんねる用語の若者言葉の語源としては「激しく」→「禿しく」のように誤変換由来が頻出する)。

用法

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「乙でした」と単に相手をねぎらうために用いられることもあれば、相手を特定の立場にあるものだと決めつけて、「自演乙」(自作自演大変だな、お疲れ様)「パクツイ乙」(人のパクリでツイートしてお疲れ様)などと嘲笑しあしらうために用いられることもある。

造語成分

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  1. 若いの。(例)乙女おとめ乙子おとご乙姫おとひめ

熟語

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関連語

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十干

文字 五行
コウ きのえ
オツ きのと
ヘイ ひのえ
テイ ひのと
つちのえ
つちのと
コウ かのえ
シン かのと
ジン みずのえ
みずのと

タイー語

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熟語

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中国語

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名詞

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  1. (音楽) 工尺譜の音階の一つ。西洋音楽のの音にあたる。
  2. (音楽) 粤曲の音階の一つ。

接頭辞 

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  1. (有機化学) 炭素数2個のアルカンエタン)、アルケンエテン)、アルキンエチン)、アルキル基エチル基)等に関する接頭辞、IUPAC命名法における、eth-etho-ethyl-に相当。

動詞

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  1. (呉語、金華語)与える
  2. (呉語、金華語)嫁ぐ
  3. (呉語、金華語)修理する。

人名

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  1. 中国人ののひとつ。

朝鮮語

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*

名詞

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  1. きのと
  2. 二番目。

熟語

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吏読

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  1. 【助詞】/

チワン語

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ローマ字表記

  1. 𰁷」の同字
  1. 序数を表す語句。
  1. 𠯲」の同字
  1. 𮚲」の同字
  2. 𮛁」の同字
  1. 𬦈」の同字

ブイ語

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  • ローマ字表記

名詞

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  1. の目の)
  2. 葡萄

ベトナム語

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*

形容詞

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ắc

  1. 充分な。

ít

  1. 少ない足りない。

út

  1. 最年少の。

副詞

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ắt

  1. (文章語) 確かに。

ngắt

  1. 非常に、きわめて

文字情報

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U+4E59, 乙
CJK 統合漢字-4E59

[U+4E58]
CJK統合漢字
[U+4E5A]
文字コード (文字集合規格)
-
  • KS X 1001: 0x6B60
漢点字 六点漢字
字典掲載
康熙字典 83ページ, 15文字目
諸橋大漢和辞典 (修訂第2版) 161
新潮日本語漢字辞典 (2008) 106
角川大字源 (1992) 65
講談社新大字典 (1993) 164
大漢語林 (1992) 89
三星漢韓大辞典 (1988) 167ページ, 7文字目
漢語大字典 (1986-1989) 1巻, 47ページ, 4文字目

[編集]
  1. 上田万年松井簡治『大日本国語辞典』 金港堂書籍、第1巻、1915年10月8日、紙面565ページ、デジタル295ページ、全国書誌番号:43022818、国立国会図書館デジタルライブラリー pid 954645/295
  2. 青空文庫(2006年11月19日作成)(底本:「日本の名随筆59 菜」作品社、1997年5月20日第8刷)http://www.aozora.gr.jp/cards/001248/files/46519_25613.html 2018年3月17日参照。これは、たぬきの肉の料理を賞味して乙な味でうまいと褒めているところである。
  3. 青空文庫(2009年4月19日作成)(底本:「坂口安吾全集 14」筑摩書房、1999年6月20日初版第1刷)http://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/42959_34964.html 2018年3月17日参照。これは、登場人物の金サンが仲の悪い源次に喧嘩を売られて「奇妙なこと(=乙なこと)を言うな、源次のくせに」と売り言葉に買い言葉で反論したところである。