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付録:ラテン語 第一変化

出典: フリー多機能辞典『ウィクショナリー日本語版(Wiktionary)』

説明

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第一変化の語には変化しない語幹がある。単数主格は語幹と語尾 -a で構成され、単数属格は語幹と語尾 -ae からなる。

第一変化名詞は基本的には女性形となる。この変化形には puella 女性女の子equa 女性牝馬 といった人間の女性や雌の生物だけでなく、aqua 女性vīta 女性生命といった非生物の物や抽象的な概念も含まれる。しかしながら男性形の第一変化名詞も例外的にあり、ほとんどの第一変化の男性名詞は男性、雄の生物あるいは性別を特定しない語に関するものであり以下のものが含まれる。

非生物の第一変化名詞で男性形のものはまれであるが以下の例が見られる。

  • 河川名
  • ギリシア語由来の様々な名詞を含む外国に由来する名詞(下記参照)

incola の類の複合語は通常、文法的に男性形(対象を限定せずに用いる場合、他の男性名詞のように包括的な語義を持てる)であるが、女性について言及して用いられる場合は文法的に女性形として扱われる例がある。従って、辞書ではしばしば incola のような語を「通性」名詞と分類する。これらはよく他の名詞と共に形容詞的に用いられる。古典ラテン語におけるこの例はよく二つの名詞の同格の説明として解釈される。 しかしながらラテン語において名詞と形容詞の区別はやや普及しており、このタイプの語は結局段々と形容詞に似た振る舞いを示すようになった。その結果、advenaのような幾つかの語は通性の形容詞として記述されるようになったと思われる。

古典ギリシア語の第一変化名詞に由来するギリシア語式の第一変化名詞には三つのタイプがある。これらの単数形は不規則に変化する。これら古典ギリシア語由来の名詞の中には通常のラテン語の名詞かのように変化するものもあり、例えば主格 athlēta は元となった語 ἀθλητής (athlētḗs)の代わりに用いられる。

特性

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  • 古い単数属格の語尾は -ās でこれはしばしば familia において pater familiāsmāter familiās のように用いられる。
  • 詩文では aquaeaquāī とするような単数属格 -āī が見られる。 .
  • 複数属格の語尾は caelicolārumcaelicolum とするように -ārum の代わりに -um を用いる例が見られることがある。
  • 第一変化名詞及び第二変化名詞は複数与格と複数奪格において –īs が共通で現れ、equus (馬)、 equa (牝馬) といった語はこれらの格では同じ形となるので区別を付けるとなると、複数与格及び複数奪格 equīs で「牝馬」を示すために equābus とする。この理由で、名詞 dea (女神)や filia (娘)の複数与格及び複数奪格で語尾 -ābus が用いられた。

格変化

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単数 複数
主格 -a -ae
属格 -ae -ārum
与格 -ae -īs
対格 -am -ās
奪格 -īs
呼格 -a -ae

例:

  • stēlla, -ae 女性
  • rosa, -ae 女性
  • nauta, -ae 男性
  • Rōma, -ae 女性 (処格あり、複数形なし)

形容詞

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単数 複数
格/性 男性/女性 中性 男性/女性 中性
主格 -a -ae -a (?)
属格 -ae -ārum
与格 -ae -īs
対格 -am -a -ās -a (?)
奪格 -īs
呼格 -a -ae -a (?)
  • 第一変化形容詞は男性形及び女性形で同じ形をとる。これらの形容詞の中性名詞との用法は非常にまれであり古典ラテン語にはほぼ見られないが、中性単数属格 ("Tempore rūricolae patiēns fit taurus arātrī", Ovid Tristia 4.6.1)や中性単数奪格 ("vīnō aliēnigenā", Aulus Gellius, Noctes Atticae 2.24.2.8 及び "dē indigenā vīnō", Pliny, Naturalis Historia 14.72.3)等のわずかな例が見られる。とは言え、中性形およびその存在は幾つかの格では疑わしい。
    • 中性形は男性/女性形と主格/対格/呼格以外では一致する。ラテン語の中性名詞及び形容詞はそれら三つの格では常に同じ形をとり、複数形の語尾は -a である。これらの規則により単数形、複数形両方で中性主格/対格/呼格の語尾は -a であると推量でき、このような語尾 -a の中性形は実際に後期の著書で見られる。5世紀の文法学者Pompeiusは「advena」は3つの性全て共通であるとみなし、フレーズ "mancipium advena" が見られる。tertullianは animālia terrigena にて中性複数として terrigena が用いられた(但しこれは古典的な特徴ではないとみなされる)。
    • しかしながら複雑なことにこのタイプの形容詞の多くは最終的に語尾 -us, -a, -um となる第一/第二変化形容詞の異形へと発展し、このことは -a (主格/対格/呼格)又は -īs (与格/奪格)で終わる中性複数形が第一変化なのか第二変化なのかを曖昧にする。例えば、カエサレアのプリスキアヌスウァレリウス・マクシムスから"alienigena studia"を引用したが alienigena を第二変化の複数形 (単数形 alienigenum に相当)と解釈した。Gaffiot はセネカの "alienigena [...] sacra" (Ep. 108.22) 及び Lucretius's "ex alienigenis rebus" (DRN 1.865) をこの語の第二変化がセネカやルクレティウスの著作では登場しないにも関わらず alienigenus, alienigena, alienigenum の例として引用した。
    • 同様の曖昧さは語尾 -ārum の複数属格にはあてはまらず、animalium indigenarum/cornupetarum のような近代ラテン語の著書で中性名詞に修飾した幾つかの例がある。

例:

ギリシア語式

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ギリシア語式の名詞
単数 複数
-ē, -ēs 女性 -ēs, -ae 男性 -ās, -ae 男性
主格 -ēs -ās -ae
属格 -ēs -ae -ārum
与格 -ae -īs
対格 -ēn -ān / -am -ās
奪格 -īs
呼格 -ae
処格 -ae -īs

Notes:

  • 複数形及び単数与格は通常のラテン語の変化と同様

例: