印する

出典: フリー多機能辞典『ウィクショナリー日本語版(Wiktionary)』
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日本語[編集]

動詞[編集]

する (いんする)

  1. (他動詞, 文章語) (「~を印する」の形で)~のしるし残す
    • 1922年、寺田寅彦「蓄音機」[1]
      エジソンの最初の蓄音機は、音のために生じた膜の振動を、円筒の上にらせん形に刻んだみぞに張り渡した錫箔の上に印するもので、今から見ればきわめて不完全なものであった。
    • 1935年、木暮理太郎「登山談義」[2]
      唯近年日本アルプスと称せらるる山の一部のみが、其儘に取残されて明治時代に至ったようなものの、若し徳川時代あたりに昔の開祖のような豪雄不撓の僧侶があって、相続いで新らしい山を開き、熱心に布教宣伝していたならば、恐らく彼等の足跡を印しない山は残っていなかったろうと想像します。
  2. (自動詞, 文章語)が〕映る
    • 1898年、国木田独歩「忘れえぬ人々」[3]
      一村離れて林や畑の間をしばらく行くと日はとっぷり暮れて二人の影がはっきりと地上に印するようになった。
    • 1922年、国枝史郎「蔦葛木曽棧」[4]
      思わず右門がこう叫んで、立ち止まった時は秋の陽が、聳える高山の頂きへ半ば没しつつやや躊躇し、残照淡く空に映え、山々の影樹木の影、そして二人の男女の影がその残る陽に照らされて、地上に長く印するのが、寂しく思われる時刻であった。
  3. (他動詞, 文章語)を〕映す
    • 1907年、小島烏水「奥常念岳の絶巓に立つ記」[5]
      北風で崖へ崖へと吹き寄せられ倚り嬰って尖立したまま、凝って雪山となったのであろう、月影を浴び、花影(高山植物の)を印する万古の雪も、幾回か人の影が落ちたかは、疑問である
    • 1950年、中谷宇吉郎「湯川秀樹さんのこと」[6]
      ハドソン河に沿った美しい広い道路に面して、十数階の立派な石造の建物がずっと並んでいる。高い十分に伸び切ったという感じの街路樹の並木が、その建物に光と影との交錯した木影を印している。

活用[編集]

印-する 動詞活用表日本語の活用
サ行変格活用
語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形


する する すれ せよ
しろ
各活用形の基礎的な結合例
意味 語形 結合
否定 印しない 未然形 + ない
否定 印せず 未然形 +
自発・受身
可能・尊敬
印される 未然形 + れる
丁寧 印します 連用形 + ます
過去・完了・状態 印した 連用形 +
言い切り 印する 終止形のみ
名詞化 印すること 連体形 + こと
仮定条件 印すれば 仮定形 +
命令 印せよ
印しろ
命令形のみ

[編集]

  1. 青空文庫、2003年5月18日作成(底本:「寺田寅彦随筆集 第二巻」小宮豊隆編、岩波文庫、岩波書店、1997(平成9)年5月6日第70刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000042/files/2446_10267.html
  2. 青空文庫、2015年5月4日作成(底本:「山の憶い出 下」平凡社ライブラリー、平凡社、1999(平成11)年7月15日初版第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001373/files/56551_56507.html
  3. 青空文庫、2009年3月28日作成(底本:「武蔵野」岩波文庫、岩波書店、2002(平成14)年4月5日第77刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000038/files/1409_34798.html
  4. 青空文庫、2016年4月3日作成(底本:「蔦葛木曽棧【上】」大衆文学館、講談社、1996(平成8)年12月20日第1刷。「蔦葛木曽棧【下】」大衆文学館、講談社、1997(平成9)年1月20日第1刷。)https://www.aozora.gr.jp/cards/000255/files/47055_58737.html
  5. 青空文庫、2016(平成28)年6月15日第2刷(底本:「日本近代随筆選 1出会いの時〔全3冊〕」岩波文庫、岩波書店、2016(平成28)年6月15日第2刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000027/files/58158_69736.html
  6. 青空文庫、2016年6月10日作成底本:「中谷宇吉郎集 第六巻」岩波書店、2001(平成13)年3月5日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001569/files/57292_59628.html