欲望

出典: フリー多機能辞典『ウィクショナリー日本語版(Wiktionary)』
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慾望 も参照。

日本語[編集]

発音[編集]

名詞[編集]

(よくぼう)

  1. ある手に入れたいと思う。特に、生活生存最低限必要な物を超えて、自分や自分たちを満足させてくれる物を手に入れたいと思う心。
    • 1917年、和辻哲郎「創作の心理について」[1]
      私は嬉しさに思わず両手を高くささげた。讃嘆の語が私の口からほとばしり出た。坂の途中までのぼった時には、私はこの喜びを愛する者に分かちたい欲望に強くつかまれていた。
    • 1933年、寺田寅彦「銀座アルプス」[2]
      高い所に上がりたがるのは人間というものに本能的な欲望である。この欲望は赤ん坊の時からすでに現われる。
    • 1950年、宮本百合子「国際婦人デーへのメッセージ」[3]
      なぜならば、こんにち世界の人民は、ヨーロッパでも、アジアでもまったく共通な一つの切実な課題の前に立たされているのですから。それは、帝国主義の物狂おしい世界制覇の欲望に抗し、世界人民の平和と民族の独立を守らなければならないということです。
  2. 性的欲求。
    • 1835年、バルザック、中島英之訳「ゴリオ爺さん」[4]
      彼は愛に燃える若者にとってごく自然な辛抱し切れない気持ちに駆り立てられ、一刻も早く愛人をこの腕の中に抱き締めたい気持ちでいっぱいだった。彼女こそは、この二ヶ月来、彼の欲望の対象だった。

類義語[編集]

動詞[編集]

する (よくぼうする)

  1. (他動詞, 格式ばった表現) 〔ある物を、特に生活生存不可欠なもの以外を〕手に入れたいと思う。…への欲望を抱く
    • 1941年、河崎顕了「一日一談」[5]
      仁慈の行動は總て是れ精神上の貯金と成る。さればこれを行ふに際しては、斷じて他の感謝を欲望すること勿れ。
    • 1953年、吉川英治「折々の記」[6]
      都會の騷音の中に明け暮れしてゐる人はみな欲望するにちがひない。「たまに靜かに居たいなあ」と。
    • 1953年、平林太一、第15回国会参議院[7]
      只今私のお尋ねいたすことを、大臣非常に謙譲の態度でお答えになつたので、御答弁がそれたようでありまするが、無償で向うから来るということを欲望しておるというようなものではありません。
  2. 性的欲求をいだく。
    • 1991年、芹沢俊介、「他界と遊ぶ子供たち 少年たちの資本主義」
      エディプス・コンプレックス理論では、父親に対する罪の意識というのは、自分が作りだすのですね。つまり父親殺しは母親を欲望した結果、割ってくる父親をなき者にしようとして(象徴的な父殺しを)行なう。

類義語[編集]

活用[編集]

欲望-する 動詞活用表日本語の活用
サ行変格活用
語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形
欲望

する する すれ せよ
しろ
各活用形の基礎的な結合例
意味 語形 結合
否定 欲望しない 未然形 + ない
否定 欲望せず 未然形 +
自発・受身
可能・尊敬
欲望される 未然形 + れる
丁寧 欲望します 連用形 + ます
過去・完了・状態 欲望した 連用形 +
言い切り 欲望する 終止形のみ
名詞化 欲望すること 連体形 + こと
仮定条件 欲望すれば 仮定形 +
命令 欲望せよ
欲望しろ
命令形のみ

中国語[編集]

発音(?)[編集]

  • ピンイン: yùwàng
  • 注音符号: ㄩˋ ㄨㄤˋ
  • 閩南語: io̍k-bōng

名詞[編集]

 

  1. (日本語に同じ)欲望

[編集]

  1. 青空文庫、2011年3月29日作成(底本:「偶像再興・面とペルソナ 和辻哲郎感想集」講談社文芸文庫、講談社、2007(平成19)年4月10日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001395/files/49897_42649.html
  2. 青空文庫、2003年4月9日作成(底本:「寺田寅彦随筆集 第四巻」小宮豊隆編、岩波文庫、岩波書店、1997(平成9)年6月13日第65刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000042/files/2478_9721.html
  3. 青空文庫、2003年6月4日作成(底本:「宮本百合子全集 第十五巻」新日本出版社、1986(昭和61)年3月20日第4刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000311/files/3296_10982.html
  4. 青空文庫、2015年3月1日翻訳、2015年10月10日作成(翻訳の底本:Honoré de Balzac Le Père Goriothttps://www.aozora.gr.jp/cards/001850/files/57353_57270.html
  5. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1053616/1/18 (書誌情報:河崎顕了「一日一談」破塵閣書房、昭和16年)https://doi.org/10.11501/1053616
  6. 青空文庫、2013年8月9日作成(底本:「折々の記」六興出版社、1953(昭和28)年12月25日初版発行)https://www.aozora.gr.jp/cards/000311/files/3296_10982.html
  7. 「第15回国会 参議院 外務委員会 第19号 昭和28年3月10日」国会会議録検索システム https://kokkai.ndl.go.jp/txt/101513968X01919530310/84 2023年5月4日参照