とらえどころ

出典: フリー多機能辞典『ウィクショナリー日本語版(Wiktionary)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

日本語[編集]

名詞[編集]

とらえどころ

  1. 物体における捉えるのに適した箇所。
    • おれは地面へもぐり込んでその鋤先を捉えた。が、鋤先にはいい捉えどころがない。(トルストイ「イワンの馬鹿」)〔菊池寛訳1928年〕[1]
  2. (多く「とらえどころのない・とらえどころがない」の形で)物事を理解納得するための取っ掛かり手がかりつかみどころ
    • その教えによると、世界の背後にはある捕えどころのない、名の付けようもない、無限の概念に該当する存在が控えている。(スワンテ・アウグスト・アーレニウス「宇宙の始まり」)〔寺田寅彦訳1931年〕[2]
    • 顔のわりに眼も鼻も口も小さいので、少し痩せたらもっと綺麗になるだろうと思われるくらいに肥ってる、大柄なぱっとした女で、あけすけで、影もなく、底もなく、捉えどころがなく、そして朗かで、そのくせ調子に一寸険のある女だった。(豊島与志雄「別れの辞」)〔1935年〕[3]
  3. 物事に対して着目する
    • 泊雲氏の「暗き湖に何洗ふ音や行水す」などという句は、同じく湖畔の行水を題材としたものである。但大正年代だけに捉え所がこまかくもなり、複雑にもなっている。(柴田宵曲「古句を観る」)〔1943年〕[4]
    • 写実的気分も濃厚であるが、特にその捕え所が巧みである。たとえば大仏殿を描くのに、ただ正面の柱や扉のみで、遺憾なきまでに大きさと美しさを現わしているごときがそれである。(和辻哲郎「古寺巡礼」)〔1946年〕[5]

[編集]

  1. 青空文庫(2004年5月18日作成、2005年12月17日修正)(底本:「小學生全集第十七卷 外国文藝童話集上卷」興文社、文藝春秋社、1928年12月25日)https://www.aozora.gr.jp/cards/000361/files/42941_15672.html 2019年11月30日参照。
  2. 青空文庫(2010年8月2日作成、2012年5月10日修正)(底本:「宇宙の始まり」第三書館、1992年11月1日初版)https://www.aozora.gr.jp/cards/000226/files/1150_40143.html 2019年11月30日参照。
  3. 青空文庫(2008年5月9日作成)(底本:「豊島与志雄著作集 第三巻(小説3)」未来社、1966年8月10日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000906/files/42462_31408.html 2019年11月30日参照。
  4. 青空文庫(2004年1月9日作成)(底本:「古句を観る」岩波文庫、岩波書店、1988年4月15日第7刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001832/files/57179_60631.html 2019年11月30日参照。
  5. 青空文庫(2010年12月4日作成)(底本:「古寺巡礼」岩波文庫、岩波書店、2006年10月5日第52刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001395/files/49891_41902.html 2019年11月30日参照。