悪心

恶心 も参照。

日本語

名詞: あくしん

悪心 (あくしん)

1. 悪事をしようとする心。
   • 女房は亭主の留守に平吉^{（へいきち）}から七十五両の金をあずけられて、俄かに悪心を起してその金をわが物にしようと巧（たく）んだ。（岡本綺堂『放し鰻』）
2. 語義1より転じて、他人に祟りをなそうとする心。他人を憎む心。
   • 男君、太郎は左衛門督と聞えさせし、悪心起（おこ）してうせたまひにし有様は、いとあさましかりしことぞかし。（『大鏡』中・太政大臣為光）

     （藤原為光の）御子息のうち、御長男は左衛門督^{（さえもんのかみ）}という方で、悪心を起こして亡くなられましたが、その有り様は実に見るに堪えないなものでした。

3. 悟りへと至る道を進む上で妨げとなる心。
   • 運つき世乱れてより以来は、ここにたたかひかしこにあらそひ、人をほろぼし身をたすからんと思ふ悪心のみ遮（さへぎ）って、善心はかつて発（おこ）らず。（『平家物語』10・戒文）

     運が尽き世が乱れた後は、ここで戦いあそこで争い、他人を滅ぼし我が身は助かろうと思う悪心だけが邪魔をして、善心はついに生じることがない。

   • 向後浮世の姿をやめて、惜しきとおもふ黒髪を切り、出家となり、二人別々（わかれわかれ）に住みて、悪心さって菩提の道に入らば、人も命をたすくべし。（井原西鶴『好色五人女』巻3・4「小判しらぬ休み茶屋 都に見し土人形あり」）

     今後は俗人の姿でいるのをやめ、惜しいと思う黒髪を切り、出家の身となって、二人別々に暮らし、悪心を取り去って悟りへと至る道に入れば、（不義密通の罪を犯したお前たち二人といえども）世人も命だけは助けてくれるであろう。

発音

• (東京式) あくしん [àkúshíń] (平板型 – [0])
• (東京式) あくし​ん [àkúshíꜜǹ] (中高型 – [3])
• IPA^(?): [a̠kɯ̟̊ᵝɕĩɴ]

類義語

• 語義1: 悪意、邪心
• 語義2: 怨恨、憎悪
• 語義3: 煩悩

名詞: おしん

悪心 (おしん)

1. 嘔吐しそうな気分。吐き気。
   • 半年程前から右の顔面が痛み、時々、悪心嘔吐（おうど）に悩んだが、最近に至って右眼の視力が劣（おとろ）え、ことに二三日前から、右眼が激烈に痛み出して、同時に急に視力が減退したので外来診察所を訪ねたのでした。（小酒井不木『痴人の復讐』）

発音

• (東京式) おしん [òshíń] (平板型 – [0])
• IPA^(?): [o̞ɕĩɴ]

類義語

• 嘔気

翻訳

訳語

• アイルランド語: masmas ^(ga) 男性
• アラビア語: غثيان‎ ^(ar) 男性 (ġaṯyān)
• アルメニア語: սրտխառնուկ ^(hy) (srtxaṙnuk)
• イタリア語: nausea ^(it) 女性
• イディッシュ語: ניטגוטקײַט‎ ^(yi) 女性 (nitgutkayt)
• 英語: boke ^(en), gagging ^(en), nausea ^(en), nauseousness ^(en), queasiness ^(en), sicchasia ^(en), wamble ^(en)
• オランダ語: misselijkheid ^(nl) 女性
• カタルーニャ語: nàusea ^(ca) 女性
• ギリシア語: ναυτία ^(el) 女性 (naftía), αναγούλα ^(el) 女性 (anagoúla)
• グルジア語: გულისრევა ^(ka) (gulisreva), გულძმარვა ^(ka) (gulʒmarva)
• クルド語:

  ソラニー: هێلنج‎ ^(ku)

• スウェーデン語: illamående ^(sv) 通性
• スペイン語: náusea ^(es) 女性
• スワヒリ語: kichefuchefu ^(sw)
• セルビア・クロアチア語:

  キリル文字: мучнина ^(sh) 女性, наузеја ^(sh) 女性

  ラテン文字: mučnina ^(sh) 女性, nauzeja ^(sh) 女性

• チェコ語: nevolnost ^(cs) 女性, mdlo ^(cs) 女性
• チャミクロ語: upa'saknanisti
• 中国語:

  北京官話: 惡心 ^(zh), 噁心 ^(zh), 恶心 ^(zh) (ěxīn)

• 朝鮮語: 구역질 ^(ko) (guyeokjil)
• デンマーク語: kvalme ^(da)
• ドイツ語: Übelkeit ^(de) 女性
• トルコ語: mide bulantısı ^(tr)
• 西フリジア語: mier ^(fy)
• ハンガリー語: megcsömörlés ^(hu), hányinger ^(hu)
• フィンランド語: pahoinvointi ^(fi)
• フランス語: nausée ^(fr) 女性
• ペルシア語: تهوع‎ ^(fa)
• ポーランド語: mdłości ^(pl) 複数, nudności ^(pl) 複数
• ポルトガル語: náusea ^(pt) 女性, enjoo ^(pt)
• マオリ語: paipairuaki ^(mi), whakapairua ^(mi), whakapairuaki ^(mi)
• マラーティー語: मळमळ ^(mr) 女性 (maḷmaḷ)
• マン島語: jiooldaght ^(gv) 女性
• ラトヴィア語: nelabums ^(lv) 男性, sliktums ^(lv) 男性
• ルーマニア語: greață ^(ro) 女性, nausea ^(ro) 女性
• ロシア語: тошнота ^(ru) 女性 (tošnota)

動詞

活用と結合例

悪心-する 動詞活用表（日本語の活用）

サ行変格活用
語幹	未然形	連用形	終止形	連体形	仮定形	命令形
悪心	し せ さ	し	する	する	すれ	しろ せよ

各活用形の基礎的な結合例

意味	語形	結合
否定	悪心しない	未然形 + ない
否定(古風)	悪心せず	未然形 + ず
自発・受身 可能・尊敬	悪心される	未然形 + れる
丁寧	悪心します	連用形 + ます
過去・完了・状態	悪心した	連用形 + た
言い切り	悪心する	終止形のみ
名詞化	悪心すること	連体形 + こと
仮定条件	悪心すれば	仮定形 + ば
命令	悪心しろ 悪心せよ	命令形のみ

---