擁する

日本語

動詞

擁する (ようする)

1. (他動詞, 文章語) 抱く。抱きかかえる。
   • 1924年、若山牧水「みなかみ紀行」

     註文しておいたとろろ汁が出来ていた。夕方釣って来たという山魚の魚田も添えてあった。折柄烈しく音を立てて降りそめた雨を聞きながら、火鉢を擁して手ずから酒をあたため始めた。

   • 1953年、小野佐世男「エキゾチックな港街」

     日本人専門のハーバーライトは、とてもこみ合って、港で儲けた旦那衆が美人を擁して踊りくるっていた。

2. (他動詞, 文章語) 所有する。
   • 1931年、浜尾四郎「殺人鬼」

     大家の一令嬢としてのひろ子でさえ、ちよつとつり合えぬ私である。そのひろ子は今や数十万の巨富を擁する主人となつてしまつたではないか。

   • 1957年、武者金吉「地震なまず」

     はじめは事業に支障をきたさぬだけの資金を擁していたが、戦後のインフレによる貨幣価値の低落はたちまち協会の経済に大影響を及ぼすことになった。

3. (他動詞, 文章語) したがえる。ひきいる。
   • 1924年、野呂栄太郎「三田社会科学研究会」

     成立以来十名前後を上下していたわが研究会も、五月二十四日の公開講演会、その後の講義開始等によって一躍六十余名を擁するにいたった。

   • 1943年、吉川英治「黒田如水」

     たとえ毛利家がいかに強大でも、公方の残存勢力を擁する三好党がどんなに抗戦してみても、織田信長のまえには、到底、焼かれる燎原の草でしかないことを、その信念で繰返したにとどまる。

活用

擁（よう）-する 動詞活用表（日本語の活用）

サ行変格活用
語幹	未然形	連用形	終止形	連体形	仮定形	命令形
擁（よう）	し せ さ	し	する	する	すれ	せよ しろ

各活用形の基礎的な結合例

意味	語形	結合
否定	擁（よう）しない	未然形 + ない
否定	擁（よう）せず	未然形 + ず
自発・受身 可能・尊敬	擁（よう）される	未然形 + れる
丁寧	擁（よう）します	連用形 + ます
過去・完了・状態	擁（よう）した	連用形 + た
言い切り	擁（よう）する	終止形のみ
名詞化	擁（よう）すること	連体形 + こと
仮定条件	擁（よう）すれば	仮定形 + ば
命令	擁（よう）せよ 擁（よう）しろ	命令形のみ