一人前

出典: フリー多機能辞典『ウィクショナリー日本語版(Wiktionary)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

日本語

[編集]

名詞

[編集]

一人(いちにんまえ)

  1. 一人一回飲食食べたり飲んだりするのに適切と考えられる食べ物飲み物。それらを入れるのに適した食器一人食べ物飲み物食器
    • 役人さんが初めここへ一人でいらつしやいましたときに、夕飯を一人前用意しといてくれと云つて、それから氷屋へ湖を渡つて行かれましたのに(横光利一「榛名」)〔1922年〕[1]
    • そして、小さな女中にいいつける。「じゃあ、もう一人前お茶わんがいるよ」(宮本百合子「田舎風なヒューモレスク」)〔1925年〕[2]
    • 然し、エーワンの料理は、その頃にして、一人前五円以上かかるらしいので、到底その後、自前で食いに行くことは出来なかった。(古川緑波「食べたり君よ」)〔1959年〕[3]
  2. 積極的な助力がなくてもするべきことをできるような、成熟した技量人格を持つ人間一丁前
    • たとえば家を建てる大工職など小僧の時代から七八年修業しなければ一人前の大工になれないのが普通だが、そういう人が最近ほとんどいなくなったそうだ。(三好十郎「絵画について」)〔1957年〕[4]
    • 十五は昔から男が一人前になる年であったが、若い衆の資格が追い追いとむつかしくなっても、実際はまだ何年間かの準備期間が必要であった。(柳田国男「こども風土記」)〔1941年〕[5]
    • 君は見たところ、立派な体格を持っているのだから、心を入れかえて奮闘さえすれば、一人前の人間に成れぬことはない。(菊池寛「青木の出京」)〔1941年〕[6]
    • 昔は、十代で一人前の仕事をした。今ではティンエイジャーと稱して親や社會の厄介になつている。(山浦貫一「老人退場説」)〔1953年〕[7]
  3. 年齢肉体大人あるいは大人と見なせるような人間。一丁前
    • そこから自動車(乘り合ひ、一人前四圓)で五里半の道を四十五六分で鹽原の福渡りと云ふ温泉場へ來た。(岩野泡鳴「鹽原日記」)〔1919年〕[8]
    • 十四五ぐらいの幼さで、まだ一人前に成熟していない、蚊細い肢体をしている見習に、ひどく職業的なものを感じたのである。(小山清「夕張の宿」)〔1952年〕[9]
    • 琉球では、家々の墓とは別に離して、「わらびばか」(童墓)を作ってある。共同墓地みたいなもので、つまり、一人前にならずに死んだものの墓ということになる。(折口信夫「石の信仰とさえの神と」)[10]
    • 「皆さんはまさか、こんな鋼鉄機械が一人前の霊魂を持っていると決議なさるわけじゃありますまいネ」と、帆村が横合から口を出した。(海野十三「人造人間事件」)〔1936年〕[11]

関連語

[編集]

[編集]
  1. 青空文庫(2004年5月1日作成)(底本:「現代日本紀行文学全集 東日本編」ほるぷ出版、1976年8月1日初版)https://www.aozora.gr.jp/cards/000168/files/4655_15559.html 2019年12月7日参照。
  2. 青空文庫(2003年9月15日作成)(底本:「宮本百合子全集 第十七巻」新日本出版社、1986年3月20日第4刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000311/files/3854_12768.html 2019年12月7日参照。
  3. 青空文庫(2011年12月1日作成)(底本:「ロッパの悲食記」ちくま文庫、筑摩書房、2007年9月5日第3刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001558/files/52329_46581.html 2019年12月7日参照。
  4. 青空文庫(2009年3月24日作成)(底本:「炎の人――ゴッホ小伝――」而立書房、1989年10月31日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001311/files/47783_34741.html 2019年12月7日参照。
  5. 青空文庫(2012年12月26日作成)(底本:「こども風土記・母の手毬歌」岩波文庫、岩波書店、2009年7月9日第12刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001566/files/53809_49722.html 2019年12月7日参照。
  6. 青空文庫(1999年1月6日公開、2005年10月17日修正)(底本:「菊池寛 短篇と戯曲」文芸春秋、1988年3月25日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000083/files/485_19845.html 2019年12月7日参照。
  7. 青空文庫(2018年1月1日作成)(底本:「文藝春秋 昭和二十八年十一月號」文藝春秋新社、1953年11月1日発行)https://www.aozora.gr.jp/cards/001949/files/58687_63638.html 2019年12月7日参照。
  8. 青空文庫(2004年5月1日作成)(底本:「現代日本紀行文学全集 東日本編」ほるぷ出版、1976年8月1日初版)https://www.aozora.gr.jp/cards/000137/files/4659_15551.html 2019年12月7日参照。
  9. 青空文庫(2017年8月25日作成)(底本:「落穂拾い・犬の生活」ちくま文庫、筑摩書房、2013年3月10日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001867/files/58065_62551.html 2019年12月7日参照。
  10. 青空文庫(2017年8月25日作成)(底本:「日本の名随筆88 石」作品社、1990年2月25日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000933/files/58168_62546.html 2019年12月7日参照。
  11. 青空文庫(2005年5月6日作成)(底本:「海野十三全集 第5巻 浮かぶ飛行島」三一書房、1989年4月15日第1版第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000160/files/3522_18463.html 2019年12月7日参照。