いくばく

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日本語[編集]

名詞[編集]

いくばく幾何幾許

  1. どれほどいくら
    • 銘々の婦人に幾何(いくばく)の共通な方向があって、制作を規定したり、撰択したりするのかは知りませんが、こうも現代の女流画家のように誰も彼も同じような美人画が出来ようとは思われません。(上村松園「雷同性に富む現代女流画家」)
    • 大波湧返りて河の広さそのいくばくという限りを知らず。(中島敦「悟浄出世」)
  2. (「も」を伴い)多数。いくらも。
    • 男一人前になるには、面白いことが幾許もある、画などやつてゐるのは馬鹿らしいといふので、それで画は止てしまつたです。(黒田譲編「名家歴訪録」)
  3. (「も」を伴い打ち消しの文脈で)どれほども(ない)。
    1. 特に時間が短いこと。
      • 私はその後いくばくもなく京都へ放浪の旅にでた。(坂口安吾「オモチャ箱」)
      • 余命いくばくもない
  4. (多く「か」を伴い)少数。いくらか。ある程度。
    • ここに記録したものの中には、終戦後の今日では、既に過去のものとなったものが見出されます。(略)しかしどの地方においても、失われた幾許(いくばく)かのものは、必ずや起ち上る日があるに違いありません。(柳宗悦「手仕事の日本」)
    • 柾木愛造は、既に世を去った両親から、幾何(いくばく)の財産を受継いだ一人息子で、当時二十七歳の、私立大学中途退学者で、独身の無職者であった。(江戸川乱歩「蟲」)

接頭辞 [編集]

いくばく【幾何、幾許】

  1. どれほどの。いくらの。
    • 和漢雑用は古来すでに用うるところ、おおいにその用に適すといえども、天下これを読む者幾何人(いくばくにん)、はた字書ありというと云えども、草行の体に至りては、また如何せん。(清水卯三郎「平仮名の説」)