天網 恢恢 疎にして漏らさず
- 天の神が地に張り巡らした網は、ゆったりして粗いようであるが、決して漏らすことはなく、それに搦め捕られる。すなわち、悪事を行えば、一時的には逃げおおせるなどうまくいったように見えるが、結局は、捕らえられる乃至その報いを受けるということ。
- 島さんに言わせると、……大谷千尋という兇賊は、どうしても百人以上の部下を持って、それを手足のように働かして居る、銀行を一つ襲撃するにも、二ヶ月、三ヶ月も準備をして、万全を期した上でなければ手を下さないらしい、とてもあれは捕えられない……って、斯こう言うんです。すると宇佐美さんは、……大谷千尋はどんなにエライと言ったところで高が泥棒だ、天網恢々疎にしてもらさずと言うじゃないか、時期が来ればきっと捕まるに相違ない……って、斯う言うんです。(野村胡堂 『青い眼鏡』 )
- 天誅も骨が折れるな。これで天網恢々疎にして洩らしちまったり、何かしちゃ、つまらないぜ(夏目漱石『坊つちやん』)