着する

出典: フリー多機能辞典『ウィクショナリー日本語版(Wiktionary)』
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日本語[編集]

動詞[編集]

する (ちゃくする)

  1. (自動詞, 文章語) 到着する。
    • 1922年、内藤鳴雪「鳴雪自叙伝」[1]
      大阪に着して、例の中ノ島の屋敷に一両日滞留した。別に見物はしなかった。この屋敷の留守居の下役に安西という者があった。
    • 1929年、浜尾四郎「死者の権利」[2]
      彼等がNホテルに着するまでに如何なる事を語り合い、如何なる目的を以てホテルまでわざわざ行ったかということは、勿論二人以外に知っている者はない訳です。
  2. (他動詞, 文章語)衣類を〕着る
    • 1889年、井上円了「欧米各国 政教日記」[3]
      (六)僧侶は袈裟・法衣(五条・七条の類)同様のものを着すること
    • 1928年、国枝史郎「生死卍巴」[4]
      覚明の風采は妙なものであった。切り下げの長髪を肩へかけ、異国めいた模様の道服を着し、刺繍の沓を穿いていた。
  3. (自動詞, 文章語) 執着する。注意を向ける。
    • 1907年、夏目漱石「野分」[5]
      天下の多数は俗人である。わが位に着するがためにこの大道徳を解し得ぬ。わが富に着するがためにこの大道徳を解し得ぬ。
    • 1917年、田山録弥「生滅の心理」[6]
      生に着した心よりも生を捨てた心の方が、――つまり物に捉へられない心の方が、活力にも富み、自由の空気にも富み、捨身から起る積極的努力に富んでゐるのである。

活用[編集]

着-する 動詞活用表日本語の活用
サ行変格活用
語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形


する する すれ せよ
しろ
各活用形の基礎的な結合例
意味 語形 結合
否定 着しない 未然形 + ない
否定 着せず 未然形 +
自発・受身
可能・尊敬
着される 未然形 + れる
丁寧 着します 連用形 + ます
過去・完了・状態 着した 連用形 +
言い切り 着する 終止形のみ
名詞化 着すること 連体形 + こと
仮定条件 着すれば 仮定形 +
命令 着せよ
着しろ
命令形のみ

[編集]

  1. 青空文庫、2009年5月1日作成、2016年2月7日修正(底本:「鳴雪自叙伝」岩波文庫、岩波書店、2002(平成14)年7月16日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000684/files/4829_35079.html
  2. 青空文庫、2012年5月23日作成(底本:「日本探偵小説全集5 浜尾四郎集」創元推理文庫、東京創元社、1993(平成5)年3月5日4刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000289/files/51272_47965.html
  3. 青空文庫、2012年8月31日作成(底本:「井上円了・世界旅行記」柏書房、2003(平成15)年11月15日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001021/files/50117_48691.html
  4. 青空文庫、2005年1月15日作成(底本:「国枝史郎伝奇全集 巻四」未知谷、1993(平成5)年5月20日初版発行)https://www.aozora.gr.jp/cards/000255/files/43567_17529.html
  5. 青空文庫、1999年2月24日公開、2015年4月18日修正(底本:「夏目漱石全集3」ちくま文庫、筑摩書房、1987(昭和62)年12月1日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/791_14959.html
  6. 青空文庫、2019年12月27日作成(底本:「定本 花袋全集 第二十四巻」臨川書店、1995(平成7)年4月10日発行)https://www.aozora.gr.jp/cards/000214/files/48907_69985.html