こはるびより
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日本語
[編集]発音
[編集]名詞
[編集]- 晩秋から冬にかけての、穏やかで暖かい日。もとは言葉通り小春すなわち陰暦で十月について言った。冬の季語。
- 文久二年といえば、今から六十余年のむかしである。江戸の末期であるから、世の中はひどく騒々しい。(中略)それからふた月ほどを過ぎた十月のなかばに、兜が突然に紛失したのである。それは小春日和のうららかに晴れた日の午(ひる)すぎで、当主の勘次郎は出番の日に当っているので朝から留守であった。(岡本綺堂「兜」『週刊朝日』1928年)
- 白いところに黒い大きい字でヴェルダンと書いたステーションへ降りた。あたりは実に森閑としていて、晩い秋のおだやかな小春日和のぬくもりが四辺の沈黙と白いステーションの建物とをつつんでいる。(宮本百合子「女靴の跡」『新女苑』、1937年)
- まアどんなものか行つて見やうといふ氣になつて、細君と二人自動車に乘つて行つたのです。小春日和の風もない好(い)い日でした。日本より外には世界中どこへ行つてもこんな好い天氣は見られまいと思はれるやうな初冬の或日でした。(永井荷風「畦道」『葛飾こよみ』1956年)
用法
[編集]晩冬から初春にかけて春の訪れを感じられる日和という意味で用いるのは本来の用法ではない。「小春」が陰暦で十月を表すため誤用とされる。