出典: フリー多機能辞典『ウィクショナリー日本語版(Wiktionary)』
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日本語[編集]

発音[編集]

  • IPA(?): /o/又はIPA: /ɰo/
  • 歴史的には/o/音と独立に、/ɰo/音を表していたと考えられるが、近世においては区別なく前者の発音となった。ただし現代でも(長野県[1]や愛媛県[2][3]など)地方によっては/ɰo/音の発音が優勢なところもある。
  • 現代仮名遣いにおいては助詞としてのみ用いられる。

助詞[編集]

  1. 目的語を表す格助詞
    1. 動作や作用の対象・目的であることを表す。
    2. 知覚的行為の対象であることを表す。
      • 映画見る。
      • 遠くで人の声聞いた。
    3. 感情を伴う行為の対象であることを表す。
      • 合格喜ぶ。
      • 理不尽なげく。
    4. 「する」を含む熟語中での形式的な対象であることを表す。
      • けがする。病気する。
      • する。得する。
      • 変な顔する。
    5. 授受やそれに類する行為の対象であることを表す。
      • おみやげもらう/くれる/あげる。
      • 英語教わる/教える。
      • お寿司ごちそうになる/ごちそうする。
      • 借りる/貸す。
      • 荷物あずかる/あずける。
      • 秘伝さずかる/さずける。
    6. 能格動詞(wp)の他動詞としての対象であることを表す。
      • これで放送終わります。
      • 学校変わった。
      • 移る部署移る。
      1. 将棋用語では駒の動きに関して拡張的に用いられることがある。
        • 逃げる。角上がる。桂跳ねる。銀立つ。歩成る。
      2. 俳句などの文芸でも拡張的な用法が見られる。
        • 松の戸や春薫るは宿の妻(正岡子規)
    7. 変化の対象であることを表す。
      • 空き地花壇に変える。
      • 子供僧侶にする。
    8. 動作や作用が及んだ結果となることを表す。
      • お湯沸かす。(←水を沸かしてお湯にする)
      • ご飯炊く。(←米を炊いてご飯にする)
      • もらう。(←娘をもらって嫁にする)
      • 養子むかえる。(←人をむかえて養子にする)
      • 公用車購入する。(←自動車を買って公用車にする)
      • 掘る。(←地面を掘って穴を作る)
    9. 所有するものに動作や作用が及ぶ受身の文、いわゆる「所有の受身文」の動作対象を表す。
      • 踏まれる。
      • とられる。
      • 成績ほめられる。
    10. いわゆる「迷惑の受身文」の動作対象を表す。
      • 隣にビル建てられて日当たりが悪くなった。
    11. 自動詞の使役表現における行為主体を表す。
      • お客さん爆笑させた。
      • 走らせる。
  2. 起点を表す格助詞
    1. 出るやそれに類する動詞で、移動の起点を表す。から
    2. やめるやそれに類する動詞で、異動、処分などの起点や所属元を表す。
    3. 時期を示す際の起点を表す。
      • さかのぼること30余年前。
      • その年隔たるはるか後代。
  3. 経路を表す格助詞
    1. 通過する場所を表す。
      • さかのぼる。
      • 下る。
      • 世界旅する。
      • 飛ぶ。
      • 川が平野流れる。
      • 急ぐ。
    2. 相対的な位置や順序を表す。
    3. 動作・作用が継続する時間・期間を表す。
      • 激動時代きる。
      • 毎日のんびり過ごす。
      • 生涯神に仕える。
      • 5回投げて被安打3、失点1だった。
      • 春の日鼓のひものゆるみけり(正岡子規)
    4. 状況を表す。
      • 雪中行軍する。
      • 逃げようとしたところつかまる。
      • 路上で倒れているの発見された。
      • 一点差しのぎきる。
      • そこなんとかお願いできませんか。
      1. 「ものを」「ところを」「のを」などの形で、逆接のニュアンスを持つ接続助詞のように用いられることがある。
        • すんでのところ助かった。
        • そのままでうまくいくもの余計なことをしてだめにしてしまった。
      2. 後悔や失意などを表す終助詞のように用いられることもある。
        • あんなことがなければきっとつつがなく暮らしていたもの
  4. 方向目標などを表す。
    1. 方向を表す。
      • 向く。
    2. 目標とすべき地点時点、出来事などを表す。
      • 期日遅れて支払う。
      • もう大阪過ぎた。
      • 台風前に備える。
      • 一二争う。
  5. 時間距離などの比較差を表す。
    • 資本主義史において当時他国に二十年先んじていた英国(服部之総「尊攘戦略史」)
    • 欧米から十年遅れて本格的に普及しはじめた。

用法[編集]

一つの単文の中で、は一つしか使われない。従って目的語と経路のは共存できない。

  • うまとおす。
  • もん通す。
  • *馬通す。(誤り)

移動の起点を表すは、終点を表すと共存しない。

派生語[編集]

翻訳[編集]

同様の機能を有する語

  • スペイン語: a (es) (前置詞;目的語が人の場合のみ)
  • 中国語:  (zh)
  • 朝鮮語: (ko) (ŭl)(パッチムのある場合)、 (ko) (rŭl)(パッチムのない場合)
  • ビルマ語: ကို (my) (kui)
  • ヘブライ語: את (he)

文字コード[編集]

脚注[編集]

  1. 大木梨華(2002) 「「を」の呼称に関する地理的研究」
  2. 佐藤栄作(2012) 「仮名の呼称ー現代の『を』の場合ー」
  3. 佐藤亮一(2009) 『都道府県別全国方言辞典』 三省堂