十二分

日本語

名詞

十二分 (じゅうにぶん 又は じゅうにふん)

1. （じゅうにぶん）程度や数量が必要、期待、目標を満たしてなおかつそれらを超えている様子。十分を超えて余り有る様子。多くの場合、助詞「の」を後続して修飾句として用いる。
   • 1905-1906年、夏目漱石「吾輩は猫である」

     吾輩は例の忍び足で再び勝手から往来へ出て、急いで主人の家に帰る。探険はまず十二分の成績である。

   • 1925年、岡本綺堂「影を踏まれた女」

     伯母もなんと答えていいか判らなかった。かれも内心には十二分の恐れをいだきながら、ともかくも間にあわせの気休めを言っておくのほかはなかった。

   • 1928年、幸田露伴「蘆声」

     今において回顧すれば、その頃の自分は十二分の幸福というほどではなくとも、少くも安康の生活に浸って、朝夕を心にかかる雲もなくすがすがしく送っていたのであった。

2. （じゅうにふん）時間や角度などの単位「分」の12つ分。
   • 1935年、關口存男「新獨逸語文法教程解説」

     新しく發見された島の經緯度は北緯八十一度十二分、東經五十度五十五分である。

   • 1937-1938年、久生十蘭「魔都」

     幸田と酒月のつもりでは、開会する間もなく解散させられるだろうと安心し切っていたのが、この目算は見事にはずれ、どういう訳か九時十二分になっても警官隊は姿を見せぬ。

形容動詞

十二分 (じゅうにぶん)

1. 〔程度や数量が〕必要、期待、目標を満たしてなおかつそれらを超えているさま。十分を超えて余り有るさま。
   • 1920年、有島武郎「惜みなく愛は奪う」

     凡ての人は芸術家だ。そこに十二分な個性の自由が許されている。私は何よりもそれを重んじなければならない。

   • 1935年、夢野久作「二重心臓」

     「十分……十二分に疑ってみる必要があると思いますなあ。事によると今度の事件の核心はそこいらに在るかも知れませんからねえ」

   • 1939年、海野十三「脳の中の麗人」

     入院費や手術費とは別に、多額の金が、その信託会社から支払われたそうである。だから黒木博士も病院も、彼の面倒を十二分にみることができたのである。

活用

活用と結合例

十二分-だ 形容動詞活用表（日本語の活用）

ダ活用
語幹	未然形	連用形	終止形	連体形	仮定形	命令形
十二分	だろ	だっ で に	だ	な	なら	(無し)

各活用形の基礎的な結合例

意味	語形	結合
推量・意志	十二分だろう	未然形 + う
過去・完了	十二分だった	連用形 + た
否定形	十二分でない	連用形 + ない
自動詞化	十二分になる	連用形 + なる
言い切り	十二分だ	終止形のみ
名詞化	十二分なこと	連体形 + こと
仮定条件	十二分ならば	仮定形 + ば
様態	十二分そうだ	語幹 + そうだ

翻訳

• 英語：more than enough